傳宗寺で、備後(現在の広島県福山市)鞆ノ浦の禅刹安国寺より伝えられた大般若経六百巻を
代々寺宝としてお守りしております。
この中世(十四世紀)の貴重な文化財(伊予市指定文化財)である大般若経には、
次のような縁起が伝えられております。
その昔、傳宗寺には竜宮より引き上げられた名鐘がありました。
その昔は、まさに観音様のお声のように遠く三千大世界に響き渡り、ひとたび耳に
するだけで身の疲れは休まり心も洗われ澄み渡るのでした。
その妙なる音色はまさに観音経に説く「梵音海潮音」の響きそのものでした。
ところがある夜より、その鐘が「安国寺へ帰る、鞆ノ浦へ帰る」と鳴り止まぬため、
観世音の霊異を感じた当時の住職は鐘を安国寺へ贈り納めました。
すると「竜宮の鐘」が鞆ノ浦に届くや安国寺より当山に大般若経六百巻が十六善神の守護によって
飛来しました。
この傳宗寺大般若経縁起物語の深意を歴代住職は次のように語り伝えてまいりました。
すなわちこの物語は、傳宗寺の観音様を信仰するものは誰であれ、仏法の大海(竜宮)に入り、
やがて海の西方彼岸より仏の智慧である大般若波羅蜜多を授かるのです。
竜宮とは仏法の奥義が秘められた真理の深海の経蔵を指し示し、そこから引き上げられた鐘とは
法を世界にひろめ轟かす仏陀の大音声です。これを打ち鳴らし仏法を世に宣布するものは、
やがて仏の智慧(摩訶般若波羅蜜多)を得ること疑いありません。
この傳宗寺大般若経縁起の物語には、私たち人間が菩提心を起こしてから悟りへと到る
魂の成熟の道が描かれているのです。
この縁起物語こそ傳宗寺本尊、聖観世音菩薩さまの威神力を示すものにほかならず、
本尊の大慈悲のご方便と甚深なる霊験利益を語り伝えているものなのです。
この大般若経六百巻を傳宗寺では寺宝の第一とし、歴代住職は十方檀信徒とともに
これを護持してまいりました。当山ではこの縁起によりまして、大般若経の神髄を説き明かす
般若心経の写経会を発願し、写経の寺として皆様と共に観音様の智慧とご加護を授かるべく
日々修行いたしております。
傳宗寺は写経の功徳によって、結縁の皆様お一人お一人が、お幸せになることを願っています。
どうか皆様には奮って、またお気軽に当山写経会にご参加下さい。
亡き人の供養を願う方、家族の幸せを願う方、心のリフレッシュを願う方、
お一人でもどうぞ、是非ご一緒いたしましょう。
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大般若経
(市指定文化財)
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